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   第6話 ~泡沫~


この前の花火大会から2週間が経った。
あれ以来夏樹さんは姿を現さない。街中を歩いていても当然見かけたりもしない。
都合がつかないだけかも、とも思ったがなぜか胸騒ぎがする・・・
 「夏樹さん来ないなー 全然見かけもしないし・・・何かあったのかな・・・?」
そんな事を考えてると、いてもたってもいられなくなって俺は家を飛び出した。
 「(とりあえず街中をもう一度歩いてみよう!闇雲に歩き回ってもダメだろうから・・・
 そうだ!花火の帰りに、こっちだからって歩いて行った方を探してみよう」
あの十字路を目指して歩いてる時にふと思った。
 「(俺、なんでこんなに夏樹さんのことが気になってるんだろ・・・)」
そんなことを考えながら歩いていると、雅たちを見つけた。
ちょうどいい、夏樹さんを見かけてないか聞いてみよう。
 「なぁ雅、ちょっといいか?」
  「ん?お、裕也じゃん どうした?」
 「ちょっと人を探しててさ 黒髪のストレートで背はこれぐらい お前らに言いたくはないがかなり可愛い子だ
 見かけたりしてないか?」
  「俺らには言いたくないってのが気にかかるが・・・やっと裕也にも彼女が出来たか?」
雅たちはニヤニヤしながら「やっと春が来たか」だの「あの裕也がねぇ」だの色々言いたいこといってやがる。
 「別に彼女じゃねーよ で、見かけてないか?」
  「見てないなぁ お前ら見たか?」
雅が周りの友達にも声を掛けるがみんな見てないらしい。
  「大体その程度の情報じゃあなぁ~ もっと何か特徴ないのか?」
その時俺は思い出した。
 「あ、お前ら会ってるじゃないか 花火の終わった後歩いてたら、ほら、春日神社の前で あの時の子だよ」
  「は?お前誰かと一緒にいたか?」
 「いやだから、あの時俺の後ろに隠れるようにしてた女の子だよ 悠司や梓も見ただろ?」
二人して首を横に振る。
  「裕也 俺たちはあの時お前以外誰一人見てないぞ?」
 「・・・え?」
  「お前の後ろの人なんかいなかったし、あの後お前一人で歩いて帰ってったじゃねーか なぁ?」
  「ああ、大体連れがいたなら飲みになんかさそわねーよ」
  「そうよ 裕也くん一人だったから声掛けたんだよ?」
雅も悠司も梓がそろって口を開く。
 「そ・・・んな馬鹿・・・な・・・」
でも、そういえば確か・・・


―――

     「お、裕也じゃん 『お前』やっぱり花火見に行ってたな?」
    「ん?ああ、まぁちょっと色々あってね」
     「色々ってなんだよーせっかく誘ったのに来ないんだもんなー
     ま、いいや 俺らこの後飲みに行くんだけどさ 『お前』も来る?」
    「いや、遠慮しとくよ また今度な」
     「お、こいつから今度は行く的な返答を貰えるとは わーった 今度は絶対だからな」
    「覚えとくよ んじゃな」
     「ああ、またな」   

―――


 「あの時、お前ら じゃなくて お前 って・・・」
  「そりゃそーだろ?お前しかいなかったんだから」
(そうだ あいつらは俺だけを相手にしていた 大体女の子と一緒だったらもっと絡んでくるはずだ)
 「お前らには見えてなかったとでも言うのか・・・?」
  「だからいなかったんだって 大丈夫かよ お前なんか変だぜ? 顔色も悪いしよ」
 「・・・悪い また今度な 急用が出来た」
俺は急いで走り去る。
  「あ、ああ。何かよく分からんが頑張れよー」
向かう先は・・・とりあえずあの十字路の奥に行ってみるしかない。俺にしか彼女が見えないというのなら尚更だ。




全力で走り続けて、ようやくあの時の十字・・・路・・・に・・・?
 「T字路!?馬鹿な!確かにあの時夏樹さんは向こうに・・・もしかしてここじゃないのか・・・?」
彼女が歩いていったはずの方角には、竹やぶがあるだけで道なんてなかった。
周りの道を調べてみるがやはりあそこしかない。
 「やっぱりここだ・・・道がないなんて・・・ありえないだろ・・・何がどうなってんだ・・・?」
俺は途方に暮れながら、とにかくあの時の道をもう一度歩いてみようと、丘の上を目指して歩き出した。


丘の上。姉さんの墓のあるところ。海が一望に出来るところ。
二人で並んで花火を眺めた場所に来た。
ずっと気を張ってたからか、のどが渇いたので自販機でお茶を買って、煙草に火をつけてもう一度思考を開始する。


今でも明確に思い出すことができる。
あの暑い夜の初めての出会い、いきなりの訪問、姉さんの遺言に浴衣姿と花火大会。
だが、雅たちは会ってないという。あの時確かに俺は夏樹さんと一緒にいたのに、彼らにはまるで見えてないかのように・・・

今考えるとおかしな点はいくつかある。
彼女はどう見ても俺より年下だ。なのに、俺が小学校6年生の時に亡くなった姉の知り合いだと言う。
それに、そんな頃の遺言なんて覚えていられるか?何年間も。
さらに、俺の家の場所。あの事故の時住んでた家じゃない。今は一人暮らしだと言うのに・・・なぜ俺の家の場所が分かったんだ?
尾行されたなら話は分かるが・・・。
謎はたくさんあるが、なぜか彼女が悪い人間だとは思えない。
それに・・・ここまで必死になってやっと気がついた。







 「俺は・・・夏樹さんが好きなんだな・・・」

自覚した瞬間一気に楽になった。ああ、俺は夏樹さんが好きだったんだ。おそらく、初めて彼女に会ったあの夜から・・・。




  「裕也さん」



 「え!?」
突然の声に顔をあげると、海に沈もうとしている太陽を背に、彼女はそこに立っていた。




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2010.09.17 Fri l 過ぎ行く夏と・・・ l COM(0) TB(0) l top ▲

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